学会発表


2009年度 学会発表

場所:富山国際会議場
日 程:平成22年9月19日・20日

第19回日本柔道整復接骨医学会学術大会にて18演題発表しました。
平成22年度 日本柔道整復接骨医学会学術論文発表!!

演題名
柔道整復師による施術は医(療)行為・医業か
川東信秀
(さいたま柔整専門学校)
Keywords:医行為、医業、診断、証明書

【目的】
従来から、医師法17条を前提に医業者は医師のみであり、柔道整復師などの国家有資格者及び無資格者を一塊に医業類似行為者と呼称・区分し、現在でも広く一般的に使用されている。しかし、このことは正確な呼称・区分であるのか、判例、厚生労働省等の行政庁による解釈に基づき再度、柔道整復師として医行為・医業の定義を検討・検証する。
【方法】【対象】
昭和25年2月16日:
収第97号山形県知事宛 厚生省医務局長 医業の回答
昭和37年2月22日:熊本地判・36年(レ)20号による判例
平成3年9月28日:
日本医事新報(医事法制)第3518号137頁 書面交付等の回答
平成6年2月3日:
衆議院第二議員会館第三会議柔道整復師4団体懇談会開催(業務確認)
などにより検証する。
【結果】
医行為・医業は、医師による医行為・医業と柔道整復師による医行為・医業が現行においても両立しており、業務範囲内における診断・証明行為について何ら問題はないと解する。よって、憲法13条:幸福追求権による国民の自由選択権の保障を勘案するならば、医業に関わる呼称・区分については国家資格(医業)者と無資格者と呼称・区分することが、より国民の適性運用に資する利益であり的確適切であると解する。
【考察】
医師と比較して、医学的判断・能力において範囲、内容、程度において差異はある。しかし、このことによって柔道整復師医業が否定されるものでない。当然であるが、資格による業範囲内の医行為・医業については全て柔道整復師が責任を負う。
証明書の証拠能力(証明能力)について通常は特段の格差はなく、医師・柔道整復師共に刑事訴訟法321条害1項3号である。但し、時には刑事訴訟の取り扱いにおいて、医師と比較し柔道整復師の証拠能力(証明能力)は不足する場合がある。

演題名
柔道整復学における医学統計普遍化への試み
―さいたま柔整専門学校付属共同研究センター設置の効果―

小林 匠、堀江俊裕
(さいたま柔整専門学校)
Keywords:統計学

【目的】
医学分野における研究結果を科学的に検証する際には統計学的有意差の検定が必要不可欠である。
しかしながら本学会での研究発表の多くは症例報告であり、治療法や治療成績を統計学的に検討されたものは少ない。
柔道整復学に基づいた整復、固定の治療効果を医師をはじめとする他分野の医療者へ認知させるためには、得られた治療効果を正しい統計法を用い正しく検定する必要がある。
今回我々は研究の核であるデータの統計処理・解析のサポートを行う附属共同研究センターを設立し、日々臨床に研鑽している柔整師が研究に参画しやすい環境構築を試みたのでここに報告する。【方法】当校の研究方針に賛同していただいた開業柔整師を対象とし、・研究のテーマおよびデザイン・プロトコル作成・サンプリング・データ集計、統計処理を共同研究形式でサポートを行った。
特に統計処理に関しては統計方法の選択や統計処理、結果解析までをおこなうことに主眼を置いた。
【結果】
研究テーマ・デザイン、プロトコル作成等の事前準備、サンプリング、データの集計・処理・解析等、関連する場面のすべてにおいて研究者の負担軽減および効率の向上に寄与することができた。
【結論】
共同研究センター設置により、日々の臨床に追われる開業柔道整復師が日々の業務に支障を来すことなく研究へ参画できる環境を構築することができた。

演題名
顎機能異常者の心理的側面について
-各種心理テストの統計的検討-

川上貴洋、堀江俊裕
(さいたま柔整専門学校)

日常の臨床の場において、顎機能以上を伴い、筋症状等を訴える症例を見かける。その多くは歯軋りや食いしばり及び咬合の異常など明確な原因を有するが、これら以外に心身的な原因から症状を訴える症例も少なくない。
顎機能異常は歯科心身症の1つとして分類されており、顎機能異常を訴える患者に対しては、心理的、社会的背景を把握する必要がある。
そのため、顎機能異常者に対して各種心理テストを施行し、心理的、性格的要因をとらえることの重要性については現在までに多く報告されてきた。
今回、心理的、性格的要因をとらえるための手段として、奥羽大学歯学部歯科補綴学第Ⅱ講座の協力を得て、同講座を顎機能異常者を主訴に来院した患者のうち心理的検討が必要と思われた女性40名(16歳~74歳:平均38.3歳)を対象に、現在までに報告されている心理テストの中から
Cornell Medical Index(CMI),
Selfrating Depression Scale(SDS),
Modified Taylor Manifest Anxiety Scale(MAS),
矢田部・Guilford Test(Y・G),
東大式Egogram(TEG),
Life Events・Life Change(LE・LC)
の6種の心理テストを実施し、心理的側面を把握するとともに、心理テスト相互の関連について検討し、興味深い知見を得たので報告する。

演題名
腰痛に対する大腿直筋へのアプローチ法
―マッサージとストレッチの比較―

二階潤一郎、関戸健一、堀江俊裕
(さいたま柔整専門学校)

腰痛に対する大腿筋群へのアプローチ法に関する報告は多い。しかし、それら報告でのアプローチ法は多岐にわたっており、その効果も一様ではないため治療者がどのアプローチ法を選択すべきかは定かではない。今回、我々はアプローチ法の選択基準を模索することを目的に、数あるアプローチ法の中からマサージとストレッチに着目しその治療効果を比較検討した。対象は本校学生の有腰痛者60名とし、腰痛の発生する運動方向で屈曲型・伸展型・側屈型・回旋型の4つの群に分類した。これら4群に対し緊張の強い一側の大腿直筋に対するマッサージ、ストレッチを行い、各アプローチによる治療効果を各群で比較した。治療効果は施術前後のVAS(Visual Analogue Scale)を計測し、その疼痛改善率で評価した。
これら調査の結果よりアプローチ法選択の指針となる興味深い知見を得たのでここに報告する。

演題名
上腕骨頚部骨折に対する早期運動療法の効果
丸茂正憲、堀江俊裕
(さいたま柔整専門学校)

「背景」社会の高齢化に伴い、骨粗鬆症による上腕骨外科頸骨折の発生率も年々増加している。保存療法の適応になることが多い本骨折の治療上の大きな問題点の一つとして可動域制限が挙げられる。可動域制限はADL低下の原因となり、本人のみならず家族や介護者の負担増につながる。今回我々は、ADL低下を最小限にすることを目的で骨折後早期運動療法を積極的に行い良好な成績を得たのでここに報告する。
「対象および方法」上腕骨外科頸骨折・NEERの分類Ⅰ型を対象に早期運動療法をおこなった。早期運動療法は受傷後10日からペンドラムエクササイズを開始した。また受傷後3週以降より他動可動域訓練を開始した。ペンドラムエクササイズは前後方向での運動100回、回転運動100回を、1クールとして1日5クール行わせた。これら対象群の肩関節可動域を測定し、従来の骨癒合確認後に可動域訓練を開始した群と比較した。
「結果・考察」上腕骨頚部骨折に対する早期運動療法を行い良好な成績を得た。早期運動療法を行った群をレントゲンで仮骨形成や骨癒合を確認した後に運動療法を開始した群と比較すると早期可動域訓練を開始した群に可動域制限が少なかった。上腕骨頚部骨折に対する早期運動療法は拘縮のリスクを抑えることにより早期可動域獲得、早期ADL自立につながる有用なリハビリテーションである。

演題名
柔道整復師養成校におけるリメディアル教育の効果と必要性
田宮慎二※、小野澤大輔、佐藤裕二、鈴木信司、原口力也※、岡田昌也※、日比久埋子、堀江俊裕※、
樽本修和※

(※さいたま柔整専門学校)
key words:リメディアル教育、入学前教育、学力低下、FD活動

大学および専門学校において実施されているリメディアル教育の内容と成果、問題点について報告する。近年、国内においてリメディアル教育(入学前教育、補習授業等)を実施する大学が増加している。背景には高等教育、専門教育を学習する以前に「教科書を読むことができない」「質問の内容が理解できない」「漢字を知らない、書けない」学生の増加がある。この原因には少子化現象を基にした大学全入や入試の多様化による学力のレベル格差、入試の早期化による入学時のモチベ-ション低下、いわゆる「ゆとり教育」での履修科目減少や学力低下などが挙げられる。この現象は一般大学のみならず柔道整復師養成施設(大学・専門学校)においても近年多く見られ大きな問題となっている。入学後の円滑な授業の遂行、教育の質保障の為、専門教育に必用な「高等学校の国語、生物、英語など」の科目について、一部の学校では既にリメディアル教育を実施しその効果を上げている。今回我々は帝京平成大学とさいたま柔整専門学校において実施されているリメディアル教育の内容とその効果、問題点に加え、今後のリメディアル教育の展望について報告する。

演題名
柔道整復師免許取得後における会計・経理教育の考察
―良き接骨院経営者の育成に向けて―

近藤祥一郎、堀江俊裕
(さいたま柔整専門学校)

柔道整復師養成施設において国家試験合格及び医療技術や医学知識の習得と国家試験合格が大きな目標である。柔道整復師免許取得後に即戦力となれるよう、整復実技実習等において整復技術等を習得している。
第17回学会にて在校生に対する会計・経理教育の意義について発表させていただいたが、在学期間3年で会計・経理教育に時間を費やすことは大変難しいと判断した。
本校では平成18年度より卒業生に対する卒後研修を実施している。柔道整復師免許取得後、卒業生は接骨院・整形外科等の臨床現場において患者に対する実践的な医療技術や医学知識を学び習得していく。本校の卒後研修では医療技術や医学知識について各方面の有識者を講師に迎え、年4回卒後研修を実施している。この卒後研修において会計・経理教育の実施の可否を検証した。
柔道整復師免許取得後に接骨院を経営するにあたり会計・経理教育は、円滑な接骨院経営のためにその知識獲得が必須である。
日本においては利益がある事業者に対して必ず課税され、税金を納入するシステムになっている。簿記の基礎知識を習得し、複式簿記に基づき取引を記録し損益計算を行うことにより節税の意義を認識するためにも、課税制度と簿記会計の知識は必須であると考える。

演題名
徒手整復は捻挫に有効か
牧野竹留、小林匠、堀江俊裕
(さいたま柔整専門学校)
key words:足関節捻挫、徒手整復、ペインスケール

足関節捻挫に対する徒手整復治療には、その治療効果を疑問視する向きが多い。同じ骨軟部損傷を扱う整形外科医に足関節捻挫に対して徒手整復を行う者は皆無であり、徒手整復を加えてはならないという意見が大半を占めている。一方、柔道整復師が主体である本学会における過去の報告では徒手整復に一定の効果があったとするものが多い。しかし、効果があったとする過去の報告は症例報告のみであるため、整復操作を加えずに固定のみを行っていても同じ結果であった可能性は否定できない。本校では徒手整復の有用性を科学的に立証し、これら疑問に解答を与えることを目的とし、過去第17・18回日本柔道整復接骨医学会学術大会において全国初の多施設ランダム比較試験を行い、足関節捻挫に対する徒手整復の有効性について報告した。
今回我々は、本校関連の接骨院ならびに整形外科医院を受診したオー・ドナヒュー分類1度・2度の足関節捻挫症例を整復群と非整復群に無作為に振り分け、それら2群間の治療成績をVAS(Visual Analogue Scale)法を用いて比較した多施設ランダム比較試験を行い興味深い結果を得たのでここに報告する。

演題名
柔道整復学領域における施術ガイドライン作成に向けて
―科学的根拠に基づく施術の検証―

篠田真一、小林 匠、堀江俊裕
(さいたま柔整専門学校)
key words:EBM、エビデンス、統計学、ガイドライン

【目的】
様々な医学領域で多くの治療法の有用性がメタアナリシスやランダム化比較試験により科学的に立証されている。また、多くの医学会において国民がどこの医療施設を受診しても、どんな治療者に治療を受けても科学的根拠に基づいた治療(以下EBM)が受けられることを目的とし、これら試験により立証された治療法に基づく治療ガイドラインの作成が推進されている。当学会においてもEBMについて様々な意見や提言が行われて久しいが、ガイドラインに類するような発表・報告はなされていない。今回我々は、他の様々な医学領域同様に柔道整復学領域においても施術ガイドライン作成が必要と考え、ガイドライン作成に必要な科学的根拠のある研究について検討した。
【方法】
第15回~第18回日本接骨医学会学術大会発表演題に対してエビデンスレベルの分類を行った。エビデンスレベルはEBM実践の水準指標とされるAHRQ(Agency for Healthcare and Quality)の分類を基準にしてIa~Ⅳまでの6段階に分類した。また、日本整形外科学会の学術集会における発表演題においてもエビデンスレベルを同様に分類し、両学会でエビデンスレベルを比較した。
【結果】
日本接骨医学会学術大会の発表演題ではエビデンスレベルが高いとされるIaおよびIbに分類される演題は認められず、Ⅱa以降にすべてが分類された。また症例和書を含む臨床研究が、演題の過半数を占めていた。
【結論】
日本接骨医学会学術大会の発表演題をEBM確立の目安となるAHRQの分類に基づき分類した。柔道整復学科を有す大学が多く設置されているにも関わらず、Ⅰa・Ⅰbに分類される研究は皆無であった。EBMに基づいた柔道整復施術ガイドラインの作成には学会、大学、専門学校などが互いに協力する必要があると考えられた。

演題名
Qアングルと鵞足炎
岡田昌也、堀江俊裕
(さいたま柔整専門学校)

鵞足は脛骨近位部、前内側部にある縫工筋、薄筋、半腱様筋の腱付着部の総称である。鵞足炎は膝屈伸を繰り返し強要されるスポーツなどによりこれらの筋の付着部に炎症を生じるものであり、日常多く遭遇する疾患の一つである。
膝の外反が本疾患の発生要因の一つに挙げられており、本疾患に対するFTAの関連性、FTA計測の有用性に関する報告は多いものの、Qアングルとの関連性に関して調べた報告はない。今回我々は、レントゲンを撮像せずとも計測が可能であるQアングルに着目し、Qアングルと鵞足炎との関連性について検討した。
対象は膝蓋骨不安定性のない健常者10名と鵞足炎と診断された患者10名とし、全例にQアングルの計測をおこない、両群間でQアングルとの関連性を調べた。
また、鵞足炎と診断された患者群に対しては膝屈曲、脛骨内旋作用をもつ縫工筋、薄筋、半腱様筋の筋緊張緩和を目的とした大腿を外旋、下腿を内旋方向へ誘導する運動療法を処方し、その治療成績を調べた。鵞足炎とQアングルに相関を認め、鵞足炎に対する運動療法にも良好な成績を得たのでここにその詳細を報告する。

演題名
柔道整復学ユニバーサルコード化の試み
小黒正幸、小林 匠、堀江俊裕
(さいたま柔整専門学校)

【目的】
地球規模でユニバーサルデザイン・ユニバーサルコードが推進されている。使用言語の障壁がなくなり、他国の文化・技術等の啓蒙や発展が進むケースが数多く認められている。
 柔道整復学は日本の伝統医学であり、特に綿包帯を用いた包帯固定学は他の医療分野とは一線を画し、その秀逸な学術大系を基盤として医学やプロスポーツの分野を支えていると思われる。一方で伝統医学であるが故に教科書・文献・参考書等のほとんどは基本的に日本語で作成されており、このことが他国・多言語使用地域への学術普及の妨げになっているのは否めない。
また先進国においては様々な新素材を用いた固定法が日々生み出されているが、それらの多くは高価であり、発展途上国や紛争地域においては入手が困難なのにたいして、綿包帯は安価で扱いやすく、応用が利いて、入手しやすいメリットがある。しかしある程度の技術と教育の必要があり、そのためのテキストの必要性がある。
そこで今回我々は簡便な方法で地球的規模でこの日本の伝統技術を活用できる教科書の作成の取り組みを行った。
【方法】
包帯固定学(南江堂)を基準書とし、包帯固定法のフローチャート化およびユニバーサルコード化を行った。見開き右ページを写真や図、左ページをフローチャートとし複数言語へ対応できるものとした。
【結果】
写真と図、フローチャートを完全に分割したことにより、左ページを差し替えるだけで複数言語への対応が可能となった。また、レクチャーを行う側と受ける側の使用言語が異なる場合においても、フローチャートで進行することによって互いが母国語で確認できるため、いわゆるランゲージバリアをほぼ解消することができた。
【結論】
今回我々は伝統医学である柔道整復学を包帯固定学の教科書を基に使用言語の違いを感ずることなく使用することのできる教科書の作成に取り組んだ。わずかの工夫によって、柔道整復学を全世界に発信、啓蒙できる可能性が示唆された。

演題名
ターゲットコントロールアイシングの検討
―急性外傷に対する間欠的アイシングの効果―

佐藤薦史、小林 匠、堀江俊裕
(さいたま柔整専門学校)
keywords:ターゲットコントロール、アイシング、温熱療法

【目的】
アイシングは急性外傷時の処置の1つとして、血管収縮作用による止血効果、組織活性低下作用による2次的低酸素障害の抑制効果、疼痛閾値上昇・神経伝達活性低下作用による疼痛緩和効果を目的に広く行われている。
しかし、冷却方法や冷却時間に明確な指針はなく、冷却方法や冷却時間の違いによって効果に差違が発生する可能性がある。
今回我々は急性外傷に対するアイシングの冷却方法や冷却時間に一定の指針を示す目的で検討を行った。
【対象および方法】
健康成人30名を対象とし、足関節部をアイスパックで25分間冷却した後、間欠的に3分間の冷却を加えた。皮膚表面温度は1分毎に測定し、その推移を調査した。皮膚表面放射温度の測定にはカスタム社製IR-302を使用した。
【結果】
アイスパックによる25分間の冷却後に3分間の間欠的冷却を加えることにより皮膚表面の冷却効果を一定に維持することが可能であった。
【結論】
急性外傷による局所の出血や炎症が長時間におよぶ例は多い。しかし、アイシングによる冷却効果の持続時間は不明であり、冷却方法や冷却時間の違いによる止血効果や抗炎症効果の持続時間の違いも不明である。これら理由から、従来のアイシング法では冷却時間の過不足のため、止血効果や抗炎症効果が十分に得られていない可能性がある。今回の我々の研究結果から短時間の間歇的アイシングは冷却効果維持に有用であり、最小限の冷却時間で最大の止血効果や抗炎症効果が得られるアイシング法である可能性が示唆された。

演題名
腰痛に対する大腿直筋ストレッチの及ぼす効果
関戸健一、二階潤一郎、堀江俊裕
(さいたま柔整専門学校)
key words:腰痛、大腿直筋、ストレッチ

【目的】
運動時に発生する腰痛に対する下肢ストレッチの効果に関する報告は多い。しかし、その作用機序については諸説あるため目標にすべき筋の固定やアプローチ法については未だ議論の分かれるところである。今回、我々は骨盤、股関節、膝関節の協調運動に関与する二関節筋のうち大腿直筋に着目し、大腿直筋へのアプローチが、腰痛に及ぼす影響を運動方向別に調べ、若干の知見を得たのでここに報告する。
【対象】
本校学生の腰痛罹患患者30名
【方法】
対象を腰痛の発現する腰椎運動方向(屈曲・伸展・側屈・回旋)で4群に分け、尻上がりテスト及びThomasテストを実施し大腿直筋の拘縮・緊張の有無を調べ4群間で比較した。また、調査結果より拘縮・緊張の強い片側の大腿直筋を同定し、同定された筋に対してストレッチを行った。また、その疼痛軽減効果をVAS(Visual Analogue Scale)を用いて評価し、4群間で疼痛軽減効果を比較した。
【結果】
腰痛に対する一側の大腿直筋へのストレッチは、いかなる腰椎運動方向で発現する腰痛に対しても一定の疼痛軽減効果が得られた。また、疼痛軽減効果を腰椎運動方向別に比較すると腰椎伸展時に発現する伸展型腰痛に対する効果が最も高かった。
【考察】
腰椎に対する一側の大腿直筋へのストレッチは、腰椎伸展時に発現する伸展型腰痛に対する効果が最も高かった。
この結果から大腿直筋の緊張による骨盤過前傾が伸展型腰痛の原因の一つであり、大腿直筋へのストレッチによる骨盤過前傾・腰椎過前彎矯正作用が伸展型腰痛改善に寄与することが示唆された。

演題名
アイシング方法別の作用および発現効果
永瀬裕美、岡田昌也、小林 匠、堀江俊裕
(さいたま柔整専門学校)
key words:アイシング、温熱療法

【目的】
アイシングの応用範囲は広く、スポーツや医療の分野において様々な形で実施されている。アイシングによる局所の循環動態変化を利用したコントラストやクライオストレッチ、クライオキネティックス等はスポーツの分野を中心に実施され、一定の効果を示している。今回我々はこれらアイシングの応用法に注目し、局所冷却による局所の循環動態変化を利用したアイシング方法に関しての検討を行った。
【方法】
健康成人30名を対象とし、間欠的にアイシングを行い各冷却時間毎に皮膚表面温度の測定をし、その推移を検討した。皮膚表面温度はカスタム社製放射温度計IR-302を用いた。
【結果】
初期冷却に置いて一定の表面温度の低下を認めたのち、間欠冷却時にて一定の皮膚表面放射温度の維持を確認できた。
【結論】
アイシングはリハビリテーションや運動負荷後の組織に対しての細胞活動鎮静作用以外に末梢循環の維持や必要な組織活性を維持する作用も有している。後者の作用発現にはアイシング法の工夫が必要であると考えられた。アイシングは目的に関わらず画一的な方法で実施されることが多い処置であるが、目的によりその方法を細分化し、その目的に適した方法を選択することが必要である。

演題名
アイシング処置における皮膚表面温度の推移に関する研究
福田麻結、岡田昌也、小林 匠、堀江俊裕
(さいたま柔整専門学校)
key words:温熱療法、アイシング

【目的】
アイシングは血管収縮作用やγ線維の活動低下、疼痛閾値の上昇、神経伝達の遮断、細胞の新陳代謝の低下、細胞の低酸素傷害防止等様々な効果が期待できる有用な物理療法である。
その簡便さや有用性から医療分野やスポーツ分野等様々な分野で用いられている。アイシングに関しての報告は多数存在するものの、その適正な温度や時間を詳細に示したものはない。
今回我々はアイシング処置の適正な温度や時間を調べる目的でアイシング処置時における皮膚表面温度の推移を経時的に測定し、その変化についての検討を行った。
【方法】
健康成人50名を対象とし、足関節周辺のアイシング処置を行い、アイシング処置部の皮膚表面温度を経時的に測定した。
皮膚表面温度はカスタム社製放射温度計IR-302を用いた。また、計測はアイシング開始前をコントロールとし、1分ごとに表面温度の測定を経時的に行った。
【結果】
冷却開始から25分前後を境に皮膚表面温度の推移に大きな変化を認めた。
【結論】
アイシング処置時の皮膚表面温度を経時的に測定した。本研究において得られた結果からアイシング処置に適正な温度および時間が示唆された。

演題名
従来型湿式ホットパックとハーブ式パックの効果比較
宮林英二、岡田昌也、小林 匠、堀江俊裕
(さいたま柔整専門学校)
key words‥ホットパック、ハーブパック、温罨法、代替医療

【目的】
ハーブ式ホットパックである「さいたま柔整式ホットパック(以下SHP)」は従来型の乾式ホットパックを上回る高い温熱効果と温度特性を有することは第18回学術大会における岡田・佐藤らの報告において既に証明されている。しかし、温熱効果が高いとされている従来型湿式ホットパック(以下HDP)との比較はまだなされていない。
今回我々は温度特性や生体への温熱効果についてSHPとHDPとの比較検討を行った。
【対象】
健康成人男子40名
【方法】
対象をSHP群とHDP群の2群とし、研究1~3の項目における温熱効果ついて2群間での比較検討をおこなった。
温度計測にはカスタム社製放射温度計IR-302を用いた。
研究1)SHP・HDPを15分間設置し「設置時」・「設置5分後」・「設置10分後」・「設置15分後」の4時点でのホットパック表面湿度の経時的推移についてSHP群とHDP群の2群間で比較した。
研究2)SHP・HDPを10分間留置し研究1と同様に4時点での皮膚表面温度の経時的推移を比較した。
研究3)SHP・HDPを設置し「設置5分後」・「設置10分後」・「設置15分後」・「パック撤去時」・「撤去5分後」・「撤去10分後」・「撤去15分後」の7時点での自覚的温熱効果をVASにより計測し、SHP群とHDP群の2群間で自覚的温熱効果経時的推移の比較を行った。
【結果】
SHP群はホットパック表面温度、皮膚表面温度、自覚的温熱効果のすべての項目においてHDP群と同等の高い温度推移を示した。
【結論】
オーガニックハーブを用いた「さいたま柔整ハーブパック」による温熱療法は湿式ホットパックと同等の自覚的・他覚的温熱効果を得ることが示された。
従来型湿式ホットパックに必要な加温機器や係留槽を必要とせず、簡便に使用できる「さいたま柔整ハーブパック」は湿式ホットパックの代替として充分な作用を有していることが示唆された。

演題名
さいたま柔整式ホットパックを用いた温熱療法に関する研究
薄菓 勉、岡田昌也、小林 匠、堀江俊裕
(さいたま柔整専門学校)
key words:ハーブパック、ホットパック、温熱療法、理学療法、皮膚温度

【目的】
第18回学術大会での岡田・佐藤らの報告では「さいたま菜整式ホットパック(以下SHP)」の高い温熱効果をはじめとする多くの有用点が示された。
しかし、その継続使用時の効果や性状の変化に関する詳細なデータはなく、ハーブを原料としたSHPが継続使用に耐えうるかという疑問点が課題として残された。
今回我々は未使用のSHP(以下SHPOO)と使用後18ケ月経過したホットパック(以下SHP18)の温熱効果を比較し、継続使用における効果および性状変化に関しての検討を行った。
【方法】
対象は健康成人40名をSHPOO群20名、SHP18群20名の2群に分け、SHP加温・設置した。設置時・5分時点・10分時点・15分時点のホットパック表面温度およびパック設置部の皮膚表面温度の測定をおこない、両群間でそれら温度変化を比較した。
温度の測定にはカスタム社製表面放射温度計IR-302を用いた。また、15分時点での被験者の自覚的温熱効果をVASにて計測しそれら効果についても2群間で比較した。
【結果】
SHPOO群に比べSHP18群にわずかなパック表面温度の低下を認めた。しかし、皮膚表面温度の推移およびVASによる自覚的温熱効果の比較では両群間に有意差は認められなかった。
【結論】
継続使用時における「さいたま柔整式ホットパック」の効果ならびに性状の経年的変化についての検討をおこなった。「さいたま柔整式ホットパック」は温罨法器具として十分な耐久性を有していることが示唆された。

演題名
外傷性頸部捻挫について
-専門教育の立場で-

木村都優司 堀江俊裕
(さいたま柔整専門学校)

【Abstract】
外傷性頚椎捻挫で来院された患者さんに対して、最も重要視せねばならない診方に、発生機序があると思われます。受傷方向に対して頚椎の損傷部位に変化が起こる。頚椎にかかる負荷により上部頚椎、中部頚椎、下部頚椎、に分類し徒手療法、固定法を考察してみました。頚椎は関節の構造上、上部の頚椎は頭部を回転する場合に可動し易い形体(形状)をしている。そのため、外傷を受けた際に頭部が回転状態であった場合は損傷が上部頚椎を中心に中部、下部と伝わっていくと思われます。頭部を前後に動かされる状態で外力を受けた際は中部頚椎を中心に上部と下部に外力が伝わっていくと思われます。また、頭部を左右側方に動かされる外力を受けた場合は下部頚椎を中心にして中部から上部に外力が伝わっていくと思われます。そのため訴えてくる患者の主訴が外傷の方向と-致してきます。徒手整復に関しての技法は多岐にわたってみられますが、私は、伝承され技法に工夫こらして施術しております。(機会が得られたならば会場にて紹介してみたいと考えています)。固走法は外傷を受けた頚椎部の可動性の方向を固定の目的とする。徒手療法は上、中、下の頚椎に対してROMを広げるように行います。さらに、ADLに関する管理指導について触れます。施術者の立場で患部の安静保持並びに留意点を指導すると同時に、患者さんにも早期治癒に対する協力と理解を頂きながら、より合理的な結果が得られるよう管理指導の重要性について纏めてまいります。